No.110
冷たい小品集 / コイズミアヤ 展  <立体>                          
2012年5月22日(火)〜6月3日(日) 5/28(月)休廊  




 「冷たい小品」 木・針金 (2012)   * 写真をクリックすると展示風景になります







その音は素のままそこに立ち上がり、揺らぎ、旋回し、いつの間にか静かにダンスを踊っていた。


冬の間ずっと聴いていたといって送られてきた高橋悠治氏の弾くサティの 「冷たい小品集」 は

繊細で示唆的で美しい曲だった。そして今回の個展にも同じタイトルが記されていた。


今年の冬は本当に長かった。いつまでも降り続く雪は無邪気な子供のように残酷だった。サティの

曲の無垢な美しさに同居するあのあきらめにも似た冷たい視線もまた同質のものなのだろうか。

季節の終り、その冬の時間がコイズミさんの 「冷たい小品集」 となってゆっくりと形を現してきていた。


設計図を引きパーツを作り組み立てていく、という一見機械的な作業から立ち上がってくる空間が、

何であんなに深度があって時として精神的ですらあるのだろう。

凍えた朝のフロントガラスについた雪の結晶に興奮し、地吹雪のホワイトアウトに震え、繊細な音を

紡ぐピアノに心を動かされた冬の日々の延長上に今回の作品はある。この全てが咀嚼され反芻され

暗喩となって図面の中に折りたたまれている。


この作品たちはあの冬なのだ。

そうであるならとてもうれしい。

私もまた、あの同じ長い冬を知っているのだから。




コイズミアヤの作品と制作ノート


























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